ヒノキ工芸

朝からあいにくの雨。今日は、4年生の学生が制作するための工房を見学するというので関係ない私も同行する。埼玉県岩槻市にあるヒノキ工芸。木や石といった素材は興味があるし、大量生産ではなくものを作る場所には興味があったので楽しみにしていた。
日芸深谷基弘先生と向井知子先生と学生と車で向かう。埼玉スタジアムの裏を通り過ぎ、周りは田圃が広がり真っ平らな所のなかに在った。玄関から、会議室と呼ばれる部屋に入るとはっとさせられた。高い天井と広い窓が広がり、その中にきれいな棚やテーブル、椅子などが並んでいる。もちろんそれらはこの工場で作られているものだという。庭は300坪ほどあり、庭ではなく森。そこで育てた植林も材料として使ったりする。散策をしたい気持ちで一杯だったが、雨のため断念する。彼女はここで卒業制作で木や石といった素材と向き合い、彫刻家ブランクーシの模刻をする。うらやましく贅沢な環境だった。

http://www.toonippo.co.jp/l-rensai/shutoken/shutoken29.html

社長の戸澤さんの話しはいい話ばかりで世界にはこういう方もいるのだ、と不思議と嬉しい気持ちになる。木の断片は本当に美しいモノで、私の耳も目も今までになく喜んでいた。工房は2階建ての古いプレハブのような建物で、機材や木、作り途中の椅子や鏡の枠、建築の模型などがある。ツバメと犬もいた。創っているものも本格的で作り途中のものでも美しい。4時間ほどの滞在だったが、お腹いっぱい。彼女にとって良い1年になりそうだ。私はたまにここに来て彼女と彼女から生まれるものを静かに撮影しようと脳裏に想いながら後にした。

旅で出会った人や、人の紹介で出会った人は、自分の知らない仕事をしている場合が多く、こんな仕事もあるんだと驚くことが多い。求人誌に載っていない職業のほうが遙かに多いだろう。