深呼吸

呼吸の仕方を忘れてしまった。自分の無力さを心から情けなく思い、家に籠る毎日。理由をつけて家にいる。桜も春もどこか心から遠い所で咲いている。隣の家の工事で、家は地震のない時でも揺れ続け、ノイローゼに近い状況までいっていた。このままではいけないと思い、諦めていた葛城修験に出掛ける。


青岸渡寺(熊野修験)の山伏の方々と葛城修験道を毎月2日間を9ヶ月、18日間かけて歩くというもの。9日は第一番経塚・友ヶ島虎島へ。10日は第4番経塚の山中渓と満福寺から志野峠粉河寺まで歩く。11日は一人で粉河から根来寺まで歩く。3日間で30キロくらいの道なりをテクテクテクテク。東京のソメイヨシノとはまた違う山桜が里山を囲む山が本当に美しい。でこぼこをした山を歩いていると心は平になる。邪心が入ると、転びそうになる。心の中を試されているかのように、道なき道を歩く。水と共に陸を渡り、木と共に山を登る。久しぶりに笑い、久しぶりに深呼吸をした3日間。旅の皆様への感謝が心を喜びに変える。国道を歩くと、和歌山と奈良を結ぶ高速道路の建設のために大きなトラックが土埃をまき散らす。心にヤマの泣き声を聞く。

粉河寺で散る桜を眺めていると、画家の正田さんから「君の写真は泉鏡花の作品のようだ」という電話が入った。私には褒め言葉として受けた。来月、金沢へ行きたい。行けないかな。。。


東京に戻ると、景色が明るく感じられた。

今日は、庭にピーマン、トマトなどの野菜の苗を植えた。同居人テニスコーツの新しいCDが出来上がった。山尾三省の本を読みながら、22世紀のことを考えている。


photo : 藤原さん