多摩美

退職した多摩美には一ヶ月に一回くらい作業場を借りに出掛ける。とても当たり前のことだけど、今年の一年生のことはひとりも知らない。春が来たら、今の四年生はいなくなってしまうし、二学年の人たちのことが全くわからなくなり、「あ、あいさんだ!(元気ですか?)とか(どうして大学にいるんですか?)」という言葉がなくなり、「あの人だれ?」という顔で見られることは間違いない。

月日は流れる。ついつい、知っている学生を探してしまうが、あの子はこの前の三月で卒業したんだった。