アイヌの刺繍

aitakaha2010-02-17

既製品がすぐに手に入るこのご時世、ものを作ることとはなにかとすっかり忘れている。一粒のお米、一針の刺繍、一本の木、身のまわりのものには心があることを忘れてはいけない。



アイヌについて勉強している最中知り合った弓野恵子さんは、私の母親と同じ世代で母親のように彼女から学ぶことが多い。女性として、一人の人間としてとても尊敬をしている。
先に生まれたと書いて、先生という言葉がある。私たちは、先生というのは学校にいるものだと教えられている。しかし、先生は一学年上の人だって先生と呼んでいいのだと思う。一人でも多く尊敬できる先生がいることは、とても幸せなことだ。恵子さんも、私にとって例外ではなく大先生である。恵子さんの家に遊びにいくと、料理や刺繍、人生経験など多くのことを学んでくる。そして恵子さんの子どもよりも下の私に対しても、対等な話をしてくれるから結果的にはお互い腹を割って話ができる。そして、いつも「わたしはまだまだだなぁ」と心から自分の未熟さを実感する。

行く度に、お土産に刺繍でなにか作って帰りなさい、と、毎回生地と刺繍糸を出してくれる。下手だけど嫌いではないから、始めるとおしゃべりをやめ、本当はお昼ご飯の用意を手伝うべきでも行かず、布と糸とにらめっこが始まる。そのときの心が全て映し出されるという刺繍によそ見は禁止。だから恵子さんも放っておいてくれる。
五時間でやっと完成。左は恵子さんの見本。右が私。デティールは恥ずかしくて見せられません。でも、完成することの喜びは何にも代えられない。時間をかけて同じ経験を行うことによって、今まで見てきたアイヌの工芸品の見え方が変わった。学べることの幅が広がる。経験できることは、本当に嬉しい。



これから時間を見つけて制作を続けます。上手になった暁には、毎年10月に日比谷公園で行われる『土と平和の祭典(加藤登紀子さんとyaeさん主催の農イベント)』のアイヌコーナーで販売します。今年は10月17日。半年後の楽しみです。