残された文字を読む 01

居候先のお家には、いい本がたくさんある。つい、自分用にアマゾンで買ってしまいたくなるのだけど、また半年後の引越の苦労が目に見えるので、抜粋してメモしておこう。


「グラフィカ」2005年no1
特集:記憶の島/宮本常一 風呂敷 

私は長いあいだ歩き続けてきた。そして多くの人にあい、多くのものを見てきた。それがまだ続いているのであるが、その長い道程の中で考えつづけた一つは、いったい進歩というのは何であろうかということであった。すべてが進歩しているのであろうか。停滞し、進歩し、同時に失われてゆきつつあるものも多いのではないかと思う。失われるものがすべて不要であり、時代遅れのものであったのだろうか。進歩に対する迷信が、退歩しつつあるものをも進歩と誤解し、時にはそれが人間だけでなく生きとし生けるものを絶滅にさえ向かわしめつつあるのではないかと思うことがある。(中略)多くの人がいま忘れ去ろうとしていることをもう一度掘り起こしてみたいのは、あるいはその中に重要な価値や意味が含まれておりはしないかと思うからである。しかもなお古いことを持ちこたえているのは主流を闊歩している人たちではなく、片隅でおしながされながら生活を守っている人たちに多い。(宮本常一 民俗学の旅 より)