文字

文字



文字は大事にせねばならない。
文字こそ私たちの命をあらわすものだから。
書かれた文字の上をまたいではならない。
たとえ印刷された文字の上でも
踏んづけて通ることは乱暴至極である。
むかしの人は
びっくりする程文字を大事にした。
泉鏡花という明治の文豪は
指で空中の書いた文字でさえ
きれいに消す真似をして清めた。
十分に消したかどうか
もう一度空中をたしかめたという。


お判りか。



天野忠詩集より


そういう文字との付き合いをしたいと、やはり、天野忠さんは心に響く。